第1回みんなの学生服 五・七・五コンテスト審査結果発表


第1回みんなの学生服 五・七・五コンテスト審査結果発表

暑い日も寒い日も、雨の日も風の日も、学校生活を、いつもの1日も一緒に過ごしてきた制服。
人生の中で制服を着る時間はほんのわずかかもしれないけど、その中での思い出は一生もののはず。
今回、そんな学生服にまつわる思い出やエピソードをまとめた五・七・五を募集しました。
たくさんのご応募をいただきありがとうございました。
厳正な審査の結果、最優秀賞(1名) ・優秀賞(5名)・入選(10名)が決定いたしましたのでここに発表いたします。

最優秀賞

 卒業の涙を拭いた足らぬ袖 山宗雲水
卒業の頃にはすっかり小さくなってしまった学ラン。卒業式の涙を短い袖で拭いたのは、よい思い出です。
【神野先生のコメント】
袖が足りなくなってきたけれど、あともう少しで卒業だから、新しいサイズの制服は買わなかったのでしょう。それだけ、短い期間に、ぐんと成長したということ。「足らぬ」ことは通常マイナスの印象を与えますが、ここでは成長の実感を伝えるプラスの意味に転じているのも、言葉の力を感じます。制服がいきいきと輝いています。

優秀賞(5名)

 3両目制服の君探す朝 りん
電車通学の私は、今気になっている人がいます。彼はいつも電車の3両目に乗っていて静かに本を読んでいます。その様子が凛々しくて制服のとても似合う人です。私はまだ彼と話した事はありませんが、毎朝いつも電車の3両目で彼を探してしまいます。その恋心を川柳にしました。
【神野先生のコメント】
「三両目」の具体的な数字が、リアルなときめきを伝えてくれます。「制服」によって、短い575ながら、青春の恋の思い出だと分かります。制服にまつわる思い出を、臨場感たっぷりにまとめたところが魅力です。

 春夕焼セーラー服のりぼん色  小池令香
学生服はジャケットタイプが増えましたが、やっぱりセーラー服が良くて、学校を選んだひとも多かったです。セーラー服のりぼんに、男子も女子も、想い出が沢山あります。
【神野先生のコメント】
春の夕焼けの甘い茜色を、セーラー服のリボンの色に見立てた、独自の発想が素晴らしい。誰もがうっとりと見つめる夕焼けにたとえたことで、セーラー服への憧れも伝わります。夕焼けの帰り道、制服で夢を語り合った時間まで見えてくる一句です。

 ほころびを母が直した糸のあと おひさままこ坂
ほころびを母が直したいとのあとに思いが詰まっていると言う意味です。宜しくお願いします。
【神野先生のコメント】
ほころぶほどに毎日制服を着て、頑張って過ごした青春の時間。丁寧に繕ってくれた糸の跡を見て、あらためて、母の無言の愛を実感したのでしょう。「糸のあと」と具体的なものに焦点を当てて書き終えたことで、余韻の深い句となりました。

 学ランの詰襟苦し自粛明け カジ
うちの孫が苦しんでいました。
【神野先生のコメント】
まさにコロナ禍の今だからこその感慨が詠まれた句です。しばらくラフな格好ばかりだったので、久々の学ランの詰襟は、窮屈で苦しいと感じたのでしょう。制服を通して、今の時代を写し取った即興性が光ります。

 夏服やギア入れ替える上り坂 伊予吟会 心嵐
通学路の上り坂、ギアを入れ替えて立ち漕ぎで上っていく。夏服の軽さが心地よい。
【神野先生のコメント】
夏服になれば、袖も短くなり、風を感じやすくなります。制服を介して気づいた季節を、敏感に察知しました。「ギア入れ替える」で自転車といわず自転車を見せたのも巧みです。「上り坂」が、夏へ向かってゆくエネルギーも感じさせますね。

入選(10名)

 制服と親に感謝の卒業式  けんちゃん
高校卒業式の日、ここまで育ててくれた両親と、3年間ずっと側にいてくれた制服に感謝の気持ちでいっぱいでした。

 始業式慌てて取り行くクリーニング にじのいろ
長期休みで学生服をクリーニングに出すのですが、取りに行くのを忘れ始業式前になって慌てて取りに行ったエピソードです。クリーニング屋さんすみません!
【神野先生のコメント】
クリーニングと私との日常の関わり方がいきいきと描かれました。始業式のかたい緊張感に対して、バタバタしている準備の姿が、ギャップを感じさせるところも面白いポイントです。

制服の記憶をたどるクラス会 ほり・たく
久々のクラス会でも、当時の制服姿を思い出すと、不思議と色んな記憶がよみがえってきます。
【神野先生のコメント】
大人になってからクラス会で集まった仲間たちを見回しながら、かつての制服だったころの姿を思い返しているというのが、ドラマの回想シーンのようで、想像力を刺激されます。

 帰ったら手を洗って着替えなさい! やすよ
学生時代に何百回、何千回と母親から言われた言葉です。

 桜咲き学生服に胸弾む 紙飛行機
学生服を始めて着た時、なんか嬉しいかったのを覚えています。
【神野先生のコメント】
制服に袖を通し、新生活が始まることへの期待感を、桜という季語に託して、フレッシュに表現してくださいました。学生服の喜びをシンプルに伝えてくれますね。

 学生着いっしょに歩む春の道 Ys
緊張するときにもうれしい時も学生服

 通学路あの娘(こ)の制服すぐわかる 馬場和義
なにせ、特別なんです!

早起きでアイロンかけてくれた母 宮のふみ
夕立に降られずぶ濡れになった翌朝。母に感謝。

 学生の終わりを告げる花一輪 三河の空
高校の卒業式に先生が学生服の胸ポケットに花を一輪さしてくれました。

 凛とした制服自慢の乙女たち 多賀二郎
思い出がいっぱい詰まった学生服が未だに棄てられず時々虫干ししていながら思い出して居ります。

最終選考の作品

じゃれあった中二のズボン膝光る ジュニア 
中学生のときに履いていた黒いズボン。特に中学二年生のときは先生にもよく怒られていました。友達ととにかくふざけて遊ぶのが生きがいという感じで。体育館や廊下、教室で走り回っては滑ったりこけたり、とにかく活発に動き回っていました。膝をついて滑ることもたくさんあり、その度に擦れて黒いズボンの膝がテカテカに光ってそのうち破れたり。男の勲章という感じでしたが、今になって考えると母親にはかなり迷惑をかけてしまっていたかな?と息子の制服を見るたび少し反省しながら懐かしく振り返っています。


涙して友の制服に顔うずめ  ルッコラ
卒業式の感動シーンを詠みました。


背伸びしてスカート折り曲げ彼を待つ キノッピー
中学生の頃、校則ではスカートを短くするのは禁止でした。でも、大好きな彼に少しでも大人っぽくも可愛くも見せたくて、スカートを折り曲げて、一緒に下校していました。ほんの少し折り曲げただけなのに、大人になったような気がしていたあの頃。部活終わりの彼を、首を長くして待つ私と、スカートを少し短くしてドキドキしている私と。長い短いも含め、甘酸っぱい制服の思い出です。


制服を着て凛とする新学期 りん
まだ制服を着ている自分が見慣れていないので、鏡の前で背筋を伸ばして凛としていた自分を思い出します。


セーラーが四半世紀の架け橋に ツリーズ
憧れのセーラー服で過ごした高校生活での思い出は3年間という短い期間でもたくさんあり過ぎました。卒業しても手放せずクローゼットに眠るセーラー服が、25年経った今でも目にするとあの頃にタイムスリップしてしまう思いを作品にしました。


桜咲く合わぬ丈には期待感 さくら
3年間で背が伸びると期待して大きめの制服を買いました。期待どうり大きくなってくれました。卒業前に裾出しもしました。。


戻れたら制服デートしてみたい みのりん
主人と出会ったのは高校卒業してすぐ後でした。お互い離れた高校だったけど、もし学生に戻れたら制服デートしてみたいなと昔の写真を見てふと思いました。


制服は僕の大事な福(服)の友 横手敏夫
制服は何年もお付き合いする幸福を生む、ほぼ毎日身に着ける服であり友ですね。


妹の隠れた手元に頬ゆるむ 赤穂寿
おさがりで渡った制服を着た妹の手元が袖で少し隠れていて、初々しくてかわいく思えてついつい笑みがこぼれました。


物持ちが良いねボタンを妻保管 さごじょう
さすがだね


あの時の第2ボタンを妻は持ち やじろべー
制服の第2ボタンをあげた彼女は今は私の妻となっています。


プライドが第二ボタンを引きちぎる 小松真人
悔しくて帰宅前に取られたことにしました


雨風に負けず走った青春時代 キャンベル
私は自転車通学で三年間制服と共に学校に行きました!カッパを忘れて雨に打たれ、風にスカートをめくられそうになったり、飛ばされそうになりながら通学しました。どんなに濡れても夜にお母さんが乾かしてくれ、朝には何事もなかったように制服を着て通学。制服も私も一つ。雨にも負けず風にも負けず頑張って一緒に通学した事を思い出します。


巣立ちの日制服たたみ私服着る かばくんのかば
社会人になる自分の、気持ちの切り替えを制服を通して自覚しました。


先生の遺影をじっと見てた通夜 エミテン
高校生の時のことです。登校すると、世界史の先生がバイク事故で亡くなったという話が耳に入ってきました。結婚目前だったそうです。その日、部活の仲間とお通夜に行ったのですが、みんなが下を向いて泣いている中、私は顔を上げて遺影を遠くから見つめていました。平均点が30~40点のとっても難しいテストを作る先生だったけど、ジーンズが似合うとっても優しい先生の顔をちゃんと覚えておくために。


アルバムのスケバン刑事(デカ)に恋ごころ うっしゃん
アルバムに写る、スカートが長いちょっとだけ悪そうなスケバン刑事風の女の子に、淡い恋ごころを抱いたものでした。


妻と会い遅れて渡した第2ボタン SKかぴさん
高校を卒業するとき、第2ボタンを渡す機会はありませんでしたが、後に妻となる女性と出会ったときに、クローゼットにしまっていた制服から第2ボタンを欲しいと言われて渡しました。今も妻が第2ボタンを大切に持ってくれいているようで、とても懐かしい思い出です。


学生服恋も涙もポケットに 三太夫
学生服姿の学生さんを見ると、想い出すのは惚れた彼女のことや、つらい思いに眠れなかった日のことを昨日のように思い出す。


スカートの折ジワ黙って伸ばす母 ももさん
中学生ごろから私を含め、周りの女の子たちは先生にバレないようにスカートを短く履こうと必死になっていました。本当は膝がかからないように履かないといけないのですが、膝上まで少しずつスカートを折って短くしていました。毎日のようにスカートを折って履いていたので、当然スカートの腰回りにはシワができていました。でも、母はそれを知っていたとは思いますが私を怒ることもなく、いつも黙って洗濯してアイロンをかけてくれていました。中高生時代の制服姿の写真を見返すたびに私の青春が蘇ってきます。そんな母に感謝しています。本当にありがとう。


ポケットに渡せなかったラブレター やじろべー
制服のポケットに遠い日の恋心が眠っていました。


可愛いとよく誉められる制服が ピコタン
可愛いねと言われた後に、その制服と、よく言われた


ボンタンを欲しいといえば飴くれた せーしゅん
家族団らん時に母親にやんちゃな子が着ていた学生服のボンタンを欲しいと言っているのをそばで聞いていた祖母が祖母の部屋にボンタン飴を取りに行ってニコッとしてその飴をくれました。多分勘違いして飴をくれたんだろうけど祖母の笑顔が素敵だったので何も言わずそのままもらいました。


ハグをした彼女の残り香消えないで~ せーしゅん
高校3年生の時、付き合っていた彼女がいました。手を握ることはしたことがありましたが、それ以上のことはしたことありませんでした。そんな彼女と卒業式の日に初めて軽くハグをしました。シャンプーの香りだと思いますがすごく甘くいい香りがして、彼女と離れた後もしばらく制服の胸や腕の部分にその残り香が漂っていました。その時、この香りがいつもでも残っていたらいいなと思ったものでした。


染み込んだ思い出脱いで大人へと 尊の君
制服が懐かしいものです。青春の1ページそのものです。


お手入れが欠かせぬ肌も制服も カジ
必要


その服にあなたのみ知るストーリー あけち
その学生服には、あなただけの思い出やストーリーが染み込んでいる。


制服と共にシェアした喜怒哀楽 セーラー服ときかん坊
晴れの入学から、部活・体育祭・学園祭・定期試験と赤点の補習や再試験、告白と大失恋、最後の夏の部活の大会、涙の卒業などなど… 制服と共に過ごした青春の喜怒哀楽の思い出は不滅ですね。


余命聞き制服着てた時期思う おひさままこ坂
悪い病気でキチンと治さないといけないと言われた時に制服を着ていた時期を思いました。励みになるので宜しくお願いします


制服の肩に花びら桜舞う ゆかりん


良き時代仕立ててもらった亡き母に ゴロー
母がコンの生地を買ってきてセーラー服を仕立て屋さんで仕立ててくれました。早くに亡くなった母との思い出の一つです


墨つけて頭に浮かぶ母の顔 イブ
習字の時間にブラウスに墨が付いたときによく半紙はどこにあったのかな?などと言われていたことを思い出した。


失恋し制服濡らした帰り道 けんちゃん
好きだった人に彼女ができ、制服を涙で濡らしながら帰りました。


ブレザーで大人に変身十五の春 柏木秀美
中学までセーラー服だった私は、当時一番憧れた黒一色のブレザーの高校に第一志望しました。もちろん、高校自体も気に入っていたのですが、一番憧れたのは制服です。真新しいブレザーに腕を通した時に鏡を見て、一気に大人になった私はワクワクして青春だなあ~と……今もあの頃を思い出すと魂だけが、高校の頃に飛んで行きます❗️あの頃に戻れるものなら戻りたい🎵


【神野先生の総評】
制服を通して学生時代をなつかしむ投句がたくさん寄せられました。恋の記憶、家族の記憶、勉強の記憶。昔のできごとなのに、いきいきと輝いて迫ってきたのは、制服という大切な存在が、過去の手触りをたぐりよせてくれたからでしょう。制服は、青春のフレッシュな思い出とともにあるものなのだと、みなさんの575が思い出させてくれました。
新型コロナウイルスをはじめとして、さまざまな困難が山積している今ですけれども、これからの未来の子どもたちにも、輝く制服の思い出がたくさんたくさん生まれますよう、心から願っています。